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安威川敏樹のネターランド王国

お前はチョーマイヨミか!?

ネターランド王国憲法

第1条 本国の国名を「ネターランド王国(英名:Kingdom of the Neterlands)」と言う。
第2条 本国の国王は「禁句゛(=きんぐ)、戒名:安威川敏樹」とする。
第3条 本国は国王が行政・立法・司法の三権を司る、絶対王制国家である。
第4条 本国の公用語は日本語とする。それ以外の言語は国王が理解できないため使用禁止。
第5条 本国唯一の立法機関は「日記」なる国会で、国王が一方的に発言する。
第6条 本国の国民は国会での「コメント」で発言することができる。
第7条 「コメント」で、国王に不利益な発言をすると言論弾圧を行うこともある。
第8条 「コメント」で誹謗・中傷などがあった場合は、国王の独断で強制国外退去に踏み切る場合がある。
第9条 本国の国歌は「ネタおろし」とする(歌詞はid:aigawa2007の「ユーザー名」に記載)。
第10条 本国と国交のある国は「貿易国」に登録される。
第11条 本国の文章や写真を国王に無断で転載してはならない。
第12条 その他、上記以外のややこしいことが起きれば、国王が独断で決めることができる。

ライ麦畑で会うならば

27日、作家のJ・D・サリンジャーが亡くなった。享年91歳だった。


サリンジャーは「ミスター・サイレンス」として知られていた。
インタビューは一切拒否。
写真撮影にもほとんど応じない。
今日の夕刊では若かりし頃のサリンジャーの顔写真が掲載されていた。
しかし、サリンジャーの著書を刊行する時には、アメリカではもちろん日本語版でも、サリンジャーの顔写真および経歴を掲載することは頑なに拒んでいたという。
サリンジャーは、私生活に干渉されることを極端なほど嫌っていた。


そんなサリンジャーの代表作と言えば、なんと言っても「ライ麦畑でつかまえて(原題:The catcher in the rye)」だろう。
サリンジャー=ライ麦畑」とイコールで結ばれてしまうほど、有名な作品だ。
サリンジャーがこの作品を持ち込んだ出版社では「主人公がクレイジー」という理由で、原稿を突き返されたという。
しかし別の出版社から発売されるとたちまち評判を呼び、大ヒットを記録した。
時に1951年、朝鮮戦争の真っ最中の頃である。


主人公である高校生のホールデン・コールフィールドが高校を飛び出し、ニューヨークの街中を彷徨い大人の世界を垣間見る、そんな内容だった。
しかし、過激な描写に反社会的な内容が問題となり、禁書とする学校も少なくなかったという。
だが、禁止されればされるほど、伝説と化するのは世の習い。
ライ麦畑でつかまえて」はたちまち青少年のハートを鷲づかみにし、類を見ないロングセラーとなった。
ジョン・レノンを射殺したマーク・チャップマンのポケットに「ライ麦畑でつかまえて」が入っており、思わぬところでまた有名になったのである。


ライ麦畑でつかまえて」に影響された作家は多い。
故・山際淳司もその一人である。
山際は高校時代、窓際の席に座って「ライ麦畑でつかまえて」を読みふけっていたという。
「ここではない、どこかへ」といつも願っていた山際が、ホールデン少年と自分を重ね合わせていたのだろうか。
ノンフィクション作家となった山際は、その後結婚し、二人の間に長男の星司くんが生まれた。
まだ星司くんが子供だった頃、山際は星司くんに、
「大きくなったら読む本を探そうよ」
と言って本屋に誘った。
特に勧めたわけでもないのに、星司くんが選んだ本は、スティーブン・キングの「スタンド・バイ・ミー」と、他ならぬ「ライ麦畑でつかまえて」だったという。


「ミスター・サイレンス」たるサリンジャーが、思わぬ形で他人の小説に登場したことがある。
W・P・キンセラの「シューレス・ジョー」である。
このタイトルを聞いてピンと来る人がいるかも知れない。
ケビン・コスナー主演の野球映画「フィールド・オブ・ドリームス」の原作小説のことだ。


主人公のレイ・キンセラが「ライ麦畑でつかまえて」の中に「キンセラ」という少年が登場するのに気付き、自分と関係があるのでは?と考えて、サリンジャーを訪ねるのである。
ちなみに「キンセラ」とはアイルランド系の名前で、非常に珍しいらしい。
そんな珍しい名前をわざわざ小説に使うので、ひょっとしたらサリンジャーを自分のことを知っているのかも知れない、と思ったのだ。
作者自身が「キンセラ」という名前なので、このストーリーを思い付いたのか、あるいは半分本気だったのかも知れない。
もちろん、作者のキンセラサリンジャーを訪ねたりはしなかっただろうが、小説の中の主人公、レイ・キンセラサリンジャーを訪ね、そして会った。


ライ麦畑でつかまえて」に登場するキンセラというのはどんな少年か?
実は全くのチョイ役で、ストーリーには直接関係がない。
ホールデンのクラスメイトにリチャード・キンセラという少年がいて、「弁論表現」という授業でキンセラがスピーチするとすぐに要点を外したことを言うので、クラスメイトから「脱線!」とツッコまれる生徒だった。
レイ・キンセラにとってリチャード・キンセラというのは双子の兄弟の名前である。


映画「フィールド・オブ・ドリームス」には、サリンジャーは登場しない。
当然だろう。
「ミスター・サイレンス」のサリンジャーが、映画に名前が出るなど考えられない。
サリンジャーの代わりになったのは黒人作家のテレンス・マンで、もちろん架空の人物だ。
だがその人物像はサリンジャーとほぼ同じで、かつての流行作家が人間嫌いになってしまい、隠居生活を送っていた。


ライ麦畑でつかまえて」というタイトルの由来は、ホールデンの誤解から来ている。
ホールデンは「ライ麦畑でつかまえて」という歌があると思い込んでいて、そのことを妹のフィービ−に言うと、
「それは『ライ麦畑で会うならば』っていう詩なのよ!」
と訂正されてしまうのである。


シューレス・ジョー」でサリンジャーはレイ・キンセラらと野球の旅を続け、ブラックソックス事件(※注)で球史から抹殺された伝説の野球選手"シューレス"ジョー・ジャクソンや、その他の名選手と出会い、心を開いた。
そこには「ミスター・サイレンス」の面影はなかった。
そして、夢の球場の外側にある、伝説の野球選手たちが集うトウモロコシ畑に消えていった。


実在したJ・D・サリンジャーも、今頃はライ麦畑で誰かと会っているのだろう。



※注:ブラックソックス事件
1919年、ワールドシリーズで起こった八百長事件。
シカゴ・ホワイトソックスが八百長を働いたとして「シューレス・ジョー」ことジョー・ジャクソンを含む8人の選手がメジャー・リーグから永久追放された。
この時、少年ファンが泣きながら叫んだ「ウソだと言ってよ、ジョー!」のセリフはあまりにも有名。
小説「シューレス・ジョー」および映画「フィールド・オブ・ドリームス」はいずれも「ブラックソックス事件」が背景になっている。