以前、ベースボール・タイムズ(BT)に、阪神フォーカス情報として、阪神外野手と奈良県地名との関係という記事を書いた。
この記事を読んだ方から、あれは面白かったとお褒めの言葉を戴いた。
ハッキリ言って単なるこじつけの下らない記事だったが、まさか褒めて下さる方がいるとは思っていなかったので、嬉しく思うとともに大変恐縮してしまった。
読んで下さった方に面白いと仰ってくれたのは非常に嬉しかったが、この記事には重大な欠点があった。
要するに、この記事を読んでもクソの役にも立たないからである。
その方は、目の付けどころが面白い、と仰ってくれたが、そりゃそうだろう。
データ重視の野球専門新聞で、こんなバカバカしい記事を書くのは、僕を置いて他にはいまい。
ここでも何度か書いているように、僕は関西難読地名・駅名フェチである。
そんな僕を喜ばせる本が二冊も発売された。
祥伝社・黄金文庫の「大阪「駅名」の謎」と、「京都奈良「駅名」の謎」だ。
先に発売されたのが大阪編で、もちろん僕も購入していた。
それが最近、京都・奈良編も発売されて、思わず衝動買いしてしまったわけだ。
いずれの本でも、冒頭に難読駅名クイズがあって、大阪編で僕は30問中26問正解と、まずまずの成績。
しかし京都・奈良編では、この両府県以外にも滋賀、兵庫に関する難読駅名クイズがあって、僕の苦手な滋賀・京都では20問中10問、神戸・阪神編では10問中6問と、約半分の惨憺たる成績。
だが奈良では、20問中19問正解と、ほぼ完璧な内容。
間違えた1問は、「六田(むだ)」を「むた」と答えてしまい、非常に悔しい思いをしてしまった。
京都・奈良編では、「あすか」になぜ「飛鳥」という漢字を充てたのかという古代の謎に迫ったり、そうかと思えば「尼崎センタープール前」という現代的な駅名に説明を加えたりと、バラエティに富んでいる。
特に「飛鳥」の謎については、著者が独自の説を打ち立てて、読んでいて唸らされたが、その一方でこの説だと、大阪にある「近つ飛鳥」はどう説明するのだろう、という疑問も生まれた。
著者の谷川彰英氏は長野県出身で、関東にも長年住んでいたが関西にはゆかりはなく、それでも関西地名の由来についてハマってしまったそうだ。
谷川氏によると、関西の地名は歴史を感じさせて奥が深く、関東の駅名や地名はつまらないのだそうだ。
たとえば、東京都国立市という地名があるが、これは駅を造る際に隣接する「立川」と「国分寺」から一文字ずつ取って駅名を「国立駅」とし、そのまま「国立市」という市名になったという。
あるいは、千葉県に津田沼という地名があるが、これも「津田」という沼があったわけではなく、「谷津村」「久々田村」「鷺沼村」が合併し、一文字ずつを取っただけの地名だそうだ。
地名学者にはこういう地名の付け方は評判が悪く、歴史を顧みない地名改竄の典型だという。
そういえば、東京都大田区も「大森区」と「蒲田区」が合併し、一文字ずつ取った区名であった。
一方、関西の駅名で言うと、「西中島南方」「喜連瓜破」「四天王寺前夕陽丘」「栂・美木多」など、決して妥協せず二つの地名をそのままくっつけた例が多く、それだけ地名を大切にする表れなのだそうだ。
地名でも、たとえば千早赤阪村を、楠木正成ゆかりの千早城と赤阪城を一文字づつ取って「千赤村」なんて命名したら、地元住民は怒り狂うだろう。
関西の地名はまだまだ謎が多く、調べれば調べるだけ奥の深さを実感できそうだ。