8月27日、横浜スタジアムで行われた横浜×阪神戦で、ライトスタンドの観客がグラウンドに落ち重体、後日死亡するという事故が起きた。
横浜スタジアムの外野フェンスは5mほどあり、そこから落ちたのだから打ちどころが悪ければ死亡しても不思議ではない。
横浜スタジアムが開場したのは1978年。
前年まで川崎球場を本拠地としていた大洋ホエールズ(現・横浜ベイスターズ)が横浜大洋ホエールズと改称し、横浜スタジアムを本拠地とした。
横浜スタジアムは現在でこそ狭い球場の代名詞のように言われているが、当時は驚天動地の近代的スタジアムと言われたものだ。
当時の日本の球場は両翼90m程度だったが、横浜スタジアムは94mと、メジャーの球場と遜色ないと思われていた。
実際には、当時からメジャーの球場のほとんどが両翼100mぐらいあったのだが。
とはいえ、狭いと言われた日本の球場の中でも、最も狭かった川崎球場から移転してきたので、ホームラン数は極端に減った。
ホームランが減ったのは球場の広さのせいばかりではない。
横浜スタジアムのフェンスが異様に高かったからである。
横浜スタジアムは、当時のメジャーの球場の主流だった、フットボール兼用の円形球場をモチーフとしていた。
当時にできたメジャーの球場は、フェンスが高い球場が多かったのである。
その頃の日本の球場では、川崎球場や日生球場のように金網を高くしただけの球場が多かった。
また、後楽園球場や大阪球場は両翼のみを極端に高くしていた。
いずれも、球場が狭いため、ホームランが出過ぎないようにする対策である。
横浜スタジアムは外野フェンスを均等に高くした。
これが「メジャー仕様」のように見えたのだろう。
その後、日本には次々とドーム球場が完成したが、いずれも横浜スタジアムのような高いフェンスの球場だった。
これらの球場の多くは、フェンスの上部がそのまま観客席の最前列という造りになっている。
だから、ホームラン性の打球が来ると観客たちはフェンスから身を乗り出して、「こっちへ(打球が)来い!」とばかりにメガホンでフェンスを必死に叩いている。
その光景を見るたびに「危ないなあ」と思っていた。
遥か5m下に落ちる危険がある。
そしてその心配が、先日現実のものとなった。
また、観客がフェンスを叩くということは、打球が邪魔される可能性もあるということである。
そもそも僕は、高すぎるフェンスが好きではない。
フェンウエイ・パークのグリーンモンスターのように個性があるのなら別だが、日本の球場の高いフェンスは全く無個性だ。
また、死角が増えて打球が見えない場合も多い。
そして前述したように、観客がグラウンドに落ちる危険性があるし、観客によって打球が邪魔されることもある。
何よりも、「ホームラン捕り」という外野手の名人芸が見られない。
フェンスの高さが5mもあれば絶対にホームラン捕りは無理だし、背後の打球はクッションボールを待つだけということになる。
味気ないことおびただしい。
理想的なフェンスの高さは、外野手がジャンプしたときに片手がフェンスの上部を超える、というものだ。
その際でも、観客に邪魔されるようなスタンドの造りではダメ。
たとえば甲子園では、外野フェンスと観客席との間に通路があるため、観客が打球を邪魔することはない。
外野フェンスと観客席の間にはスペースがあるのが望ましい。