そもそもCMとは胡散臭いものなのだが、その中でも群を抜いて胡散臭いCMがあったので、それを紹介しよう。
○やずや(発芽十六雑穀)
昼食時に主婦Aの家にお邪魔した主婦B。
主婦Aの家で昼メシを食っていこうという魂胆らしい。
主婦A「お昼、昨日の残りのカレーでいい?」
主婦B「いいよー」
主婦A「はい(カレーの皿をテーブルに置く)」
主婦B「わー、雑穀ご飯を使ってるんだ」
ちょっと待てーい!
主婦Aが「カレーでいい?」って訊いたとき、既にカレーライスを盛った皿を手にしていたぞ。
主婦Bが「いいよー」と言うが否や、主婦Aはカレーライスの皿をテーブルに置く。
主婦Aは何のために「お昼、昨日の残りのカレーでいい?」などと訊いたのだろうか?
「カレーでいい?」と訊くのなら、カレーを温める前に尋ねるべきで、訊いた時には既に皿に盛り付けているのだから、「つべこべ言わずに残り物のカレーを食え!」と言っているようにも思える。
それならば「カレーでいい?」などと訊く必要もないわけで、黙ってカレーライスの皿をテーブルに置けばいい。
主婦Aはなにゆえこんな無意味な問いかけをしたのだろうか?
もし、「カレーでいい?」と主婦Aが訪ねた時に、主婦Bが、
「あ、ごめん。昨日ウチもカレーだったんだ。別のにしてくれない?」
などと答えたら、主婦Aはどうするつもりだったのだろう。
主婦Aは既にカレーを温め、雑穀ご飯と一緒に皿に盛っているのだから、引っ込めようがないと思われる。
このケースでは、主婦Aはカレーを温める前に「お昼、昨日の残りのカレーでいい?」と尋ねるべきである。
その時に主婦Bが「いいよー」と言えば、カレーを温めれば済む話だ。
上記のような理由で主婦Bが「別のにして」と言えば、他の食物を用意すればいいだろう。
他にオカズがなければ、外に食べに出かければいい。
普通なら、次のような会話が成り立つだろう。
主婦B「そろそろお昼の時間ね。何か食べに行こうか」
主婦A「昨日の残りのカレーがあるから、ウチで食べようよ。それでもいい?」
主婦B「いいよー」
主婦A「ウチ、雑穀ご飯を使ってるんだけど、口に合うかなあ?」
主婦B「うん、それでもいいよ」
こういう会話があって、主婦Aは初めて昨日の残りのカレーを温めることができる。
ところが、こんな当たり前の光景をすっ飛ばして上記のようなシーンを成り立たせようというところが、いかにも胡散臭い。
話をCMに戻して、雑穀カレーを食べながらこんな会話で盛り上がる。
主婦A「雑穀ご飯を食べていると、健康に気を遣っているっていう気がするでしょ?」
主婦B「するする」
ここで重要なのは、主婦Aは「健康に気を遣っているという気がする」と言っているが、「(雑穀ご飯が)健康にいい」とは言っていないのである。
要するに、発芽十六雑穀を食べるのは、健康にいいからではなく、「健康に気を遣っている」という心理的な効果しかないことを、このCMでは公言しているということだ。
つまり、発芽十六雑穀を食べても、健康面でプラスになることはない、という予防線を張っているのだろうか。
どーでもいいことだが、主婦Aと主婦Bを演じている女優の、演技の稚拙なこと。
ダイコン役者とはこのことだろう。
本当に演技がヘタなのか、それとも監督が大映テレビのようにわざと胡散臭い演技を要求しているのか、真意は定かではない。