今日、横浜国際総合競技場でFIFAクラブワールドカップの準決勝第二試合が行われ、ヨーロッパ代表のACミラン(イタリア)がアジア代表の浦和レッズ(日本)を1−0で倒し、決勝戦に進出した。
日本チームとして初めてこの大会に出場し、準決勝に進出してヨーロッパの名門チームに対して、接戦を演じたことは特筆すべきだろう。
日本のクラブチームが世界一を争う名門と互角の勝負を争うなんて、かつては考えられなかった。
ただ、得点差は1点と接戦に見えるが、試合内容はミランが圧倒していた。
ボールはミランが完全に支配し、浦和が勝つ気配はほとんどなかった。
ゴール前にことごとく攻めていたのはミランで、たまたまシュートを外していただけだ。
それでは、明らかに格下と思われる浦和に対し、ミランは余裕の試合運びをしていたのか?
おそらくそんなことはないと思う。
ミランの選手たちは必死というか、かなりのプレッシャーの中で戦っていたはずだ。
先日、野球の日本代表が北京五輪のアジア予選に全勝して、本戦出場を果たしたのは記憶に新しいが、「見ていて疲れた」と感じた人は多かったと思う。
相手は格下の韓国、台湾、フィリピンである。
韓国とはたしかに近年は接戦を演じており侮れない相手であるが、台湾には負けておらず、フィリピンなんて相手にならないと思った人がほとんどだろう。
結果的にはフィリピンには圧勝、韓国には1点差勝ち、台湾には中盤まで粘られながら後半には突き放すという、予想通りの結果となった。
実力的には日本が一番上、と思いながら、野球は何が起こるかわからない、とドキドキしながらテレビで観ていたファンが多かったから、アジア予選では高視聴率になったのだと思われる。
つまり、視聴者に大きなプレッシャーがかかっていたわけだ。
しかし、プレッシャーがかかっていたのは視聴者だけではない。
選手はそれ以上にプレッシャーがかかっていた。
野球のレベルが高い韓国や台湾との試合でプレッシャーがかかるのはわかるが、日本代表の四番打者だった新井によると、どう考えても負けるはずのないフィリピンとの試合でも、かなり緊張したという。
一発勝負では、相手が弱いほうがよりプレッシャーを感じるのではないか。
スポーツライターの玉木正之が、今回のアジア野球で我々日本人は言い知れぬ緊張を強いられたが、格下を相手とするスポーツ強豪国の心理を少しは理解できたのではないか、と言っていた。
格上が感じるプレッシャーは、世界大会で日本人がほとんど感じたことがない感覚だろう、と。
そう考えると、スポーツ強豪国よりもスポーツ発展途上国のほうが、負けて元々なのだから純粋にスポーツを楽しめ、ヘンなプレッシャーを感じることもないだろう、とも思える。
元々、日本のスポーツは、野球はメジャーリーグに挑戦し、サッカーやラグビーは世界に跳ね返されて育ってきた。
つまり、格下との対戦がほとんど無かったので、格上の苦しみがわからなかった。
2006年のFIFAワールドカップで、ブラジルは日本に4―1と完勝したが、そのプレッシャーたるや凄かったのではないか。
点差的には圧倒していたが、格下の日本に先制点を奪われたときは、ブラジリアンにも焦りがあっただろう。
サッカーはロースコアのゲームであり、いくら攻めてシュートを打ってもそれらがことごとく外れて、1−0で負けるケースなんて、多々あるのだから。
それでも、同点に追いついてからは縦横無尽に走り回り、最終的には日本を圧倒したのはさすがである。
そう考えると、今日のACミランのプレッシャーは相当なものだったと思われる。
ただ、確実に勝つ方法をミランの選手達は知っていたわけだ。
だからこそ、格下の浦和に接戦を演じられても、最終的には勝つことができたのだろう。
これは、韓国相手に苦戦しながら、最終的には勝つことができた野球日本代表に通ずるものがあると思う。
これが数字では計り知れない、選手及びチームの技量なのではないか。