2017年も、もうすぐ暮れようとしている。
それでは、国王に関する今年の重大言語トップ5を発表しよう。
①ハードフォーク
②ブロックチェーン
③ローンチ
④トークン
⑤ローソク足
まるで某東京都知事のように、わけのわからないカタカナ語ばかり並んだが、ほとんどの人が、これらの意味がわからないに違いない。
実はこれ、全て仮想通貨に関する用語なのだ💰
こんなふうに言うと、まるで国王がこの1年間はドップリ仮想通貨に浸かっていたか、仮想通貨で大儲けあるいは大損したかと思われるかも知れない。
実はそういうわけではなく、仮想通貨なんて買ったこともないし、そもそも仮想通貨の存在を知ったのは今年の11月初めのことだ。
それまでも、仮想通貨という言葉は聞いたことがあったが、どんな物なのかは全く知らなかった。
ところが11月の初め、依頼が突然来た。
仮想通貨のことを書いて欲しい、ということである。
仮想通貨のことなんて全然知らないですよ、と言ったのだが、それでも構わないという。
やむを得ず、この仕事を引き受けたのだが、その記事の数は書きも書いたりなんと80本!
これを2ヵ月足らずの間、実際にはクレジットカードの記事も挟んだので、実質的には1ヵ月半の間に仮想通貨の記事を80本も書いたのである。
つまり、1日に2本近くは仮想通貨の記事を書いていたわけだ。
仮想通貨のことはド素人だった国王も、80本も記事を書くとイヤでも仮想通貨に関しては、ある程度のことはわかった。
最近ではテレビでも仮想通貨のことを取り上げられることが多くなったが、それでも本当の姿を知らない人がほとんどだろう。
それでは国王が、2ヵ月の間に得た仮想通貨に関する知識をひけらかしてお伝えしよう。
仮想通貨の歴史
12月中旬ぐらいから、出川哲朗が出演しているコインチェックというCMを見たことがある人もいるだろう。
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あるいはその前から、成海璃子が出演しているビットフライヤーのCMもあったが、これは以前から関東ローカルで流れていて、最近は全国でも流れるようになった。
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これらのCMを見ただけでは、どんな会社の宣伝なのかはわからないだろう。
コインチェックおよびビットフライヤーとは、仮想通貨取引所(あるいは仮想通貨販売所)のことなのだ。
ちなみにビットフライヤーのCMは、日本初の仮想通貨に関する地上波のテレビCMである。
仮想通貨取引所(販売所)というのは、仮想通貨の売買を行う場所だ。
この二つのCMに共通しているワードは、ビットコインという言葉である。
仮想通貨のことは知らなくても、ビットコインという言葉は聞いたことがあるだろう。
しかし、ビットコインとは何か、わかっていない人がほとんどに違いない(出川哲朗も、このCMに出演した後も仮想通貨のことは全然わからない、とテレビ番組で言っていた)。
簡単に言えば、ビットコインとは仮想通貨の一種である。
もっと言えば、ビットコインは元祖・仮想通貨と言っていい。
CMだけを見ていると、ビットコインの宣伝のように思えるが、それは有り得ない。
その理由は、後ほど述べよう。
ビットコインが誕生したのは、2009年1月3日。
つまり来年の1月3日で、ようやく9歳を迎えるという、まだまだ子供の通貨なのだ。
2009年1月3日に、仮想通貨の歴史が始まった。
ちなみに2009年というのは、衆議院総選挙で自由民主党が大敗、民主党政権が誕生した年である。
そしてこの年の2月2日、つまりビットコインが生まれた1ヵ月後に、象徴的な出来事が起きた。
アフリカのジンバブエで、1兆ジンバブエ・ドルが1ジンバブエ・ドルになるというデノミネーションが実施されたのである。
つまり、それまでのジンバブエ・ドルの価値が1兆分の1に下落するという、超ド級ハイパー・インフレーションだ。
こんな通貨が信用されるわけもなく、2015年9月にジンバブエ・ドルは廃止された。
こういう時代にビットコインが生まれたのは、ちょっと心に留めておきたい。
ビットコインの理念を論文として発表したのはサトシ・ナカモトなる人物である。
いかにも日本人か日系人のような名前だが、未だにその正体は明かされていない。
米ドルや日本円、ユーロなどの法定通貨は国もしくは地域が管理し、中央銀行(日本円なら日本銀行)が発行している。
しかし、国に関係なく世界中の人が自由に取り引きできる通貨があればいい、という発想からビットコインが生まれた。
ビットコインにおける最初の取り引きは、なんとピザ2枚!
もちろん、ビットコインが誕生した当初は価値なんて全くなかった。
誕生して9ヵ月後の2009年10月5日、ビットコインに初めて金銭的な価値が生まれたが、このときの値段は日本円にして1ビットコインが僅かに0.07円。
チロルチョコを1個買うのに約143ビットコインが必要である。
ちなみに現在、143ビットコインがあれば「田園調布に家が建つ」。
翌2010年5月17日、アメリカ合衆国のフロリダに住むプログラマーが、ビットコイン・フォーラム(ビットコインにおける2ちゃんねるのようなもの)に投稿した。
「1万ビットコインを払うさかい、誰かピザ2枚を売ってくれへん?」
と。
ビットコインで物を買う?
そんなことを思い付く人物など、それまで1人もいなかったのだ。
「マジでそんなこと、ゆうてるんか?」
「めっちゃオモロ過ぎて草」
「誰か、このアホな提案に乗ったれや」
という会話がインターネット上で行われたのだろう。
そして5月22日、ある人物が、
「ほんならワイがピザを売ったるわ」
と返事をして、その人物はピザ屋にピザを2枚注文、フロリダのプログラマーに送った。
その人物は、ピザを売って儲けようとしたのではなく、あくまでもシャレで冗談に乗っただけだったのだろう。
もちろん、フロリダのプログラマーは1万ビットコインを支払った。
これがビットコインにおける世界初の取り引きである。
そのため、毎年5月22日は「ビットコイン・ピザ・デー」として、ビットコイン関係者はピザを食べてお祝いしている。
ちなみに、2017年12月は1ビットコインが200万円まで高騰した。
もしピザを売った人物が、ずっと1万ビットコインを持ち続けていたとしたら、なんと200億円もの資産を持っていることになる。
ピザ1枚の値段が100億円という、とんでもないことになっていた。
もし、この取り引きが成立していなければ、仮想通貨は今でも「仮想」のままだったかも知れない。
つまり、ピザ2枚が世界経済の歴史を変えたのだ。
そもそも仮想通貨って何?
それでは、仮想通貨って一体、何なんだろう?
このことを理解している人は、ほとんどいない(国王も2ヵ月前まではそうだった)。
そこで、国王が2ヵ月間で得た知識を駆使して、最も基本的な仮想通貨であるビットコインを例にして説明しよう。
ビットコインはコインと銘打ちながら、実際にはコイン(硬貨)はもちろん紙幣なども存在しない。
ビットコインに限らず仮想通貨は実体などなく、インターネット上の数字に過ぎないのである。
仮想通貨が仮想の通貨と呼ばれる所以だ。
だからこそ、仮想通貨は何となく胡散臭い通貨だと思われているのである。
しかし考えてみれば、最近ではほとんどの企業で給料は現金では支払われていない。
昔は「給料袋が縦に立つ」ことが一流のステータスとなっていたものだが、 現在ではほとんどが銀行振込による給与支払いである。
つまり給料は、封筒が縦に立つという実感が湧くものではなく、通帳での数字に過ぎない。
また、最近では電子マネーが登場して、現金でのやり取りがなくても買い物ができる。
鉄道系の電子マネーでいえばSuicaやICOCAなどで、楽天Edyやおサイフケータイも電子マネーの一種である。
これらの決済に、紙幣や硬貨は必要ない。
ビットコインを取り扱っている店だって、店側が提示するタブレットのQRコードにスマートフォンをかざせば支払いができる。
そういう意味では仮想通貨も、電子マネーと似たような存在に思えるが、実際には全然違う。
仮想通貨の仕組み
日本円は、日本国政府の法律に基づいて日本銀行が発行している。
ところが仮想通貨、たとえばビットコインには発行元が存在しない。
上記でも触れたが、ビットコインには発行元がないので、CMなど行うことができないのである。
発行元がないのに、ビットコインはどうやって運営しているのだろうか。
ビットコインの運営を実現させているのは、上記の重大言語トップ5の②に挙げられているブロックチェーンという技術である。
ビットコインでは取引データごとにブロックが生成され、それがチェーンによって繋がれているので、ブロックチェーンと呼ばれるわけだ。
取引データのブロックは、約10分ごとに生成される。
ブロックに記録される取引データとは、どういうものなのだろうか。
たとえばAさんからBさんに1ビットコインが渡ったとする。
そうすると、AさんがBさんに1ビットコインを渡し、BさんがAさんから1ビットコインを受け取ったというデータが、ブロック上に記載されるわけだ。
この取引データは、ビットコインの利用者全てが見ることができる。
この情報を透明化することによって、通貨の発行元が存在しなくても、ビットコインは秩序を保っているのである。
つまり、取引データを全員で監視することによって、不正を防いでいるわけだ。
そうなると、プライバシーのことが心配になるだろう。
自分がいつも特定の誰かに貢いでいることがバレるのではないか、などと不安に思う人もいるに違いない。
だが、それも杞憂に終わる。
そもそもブロック上のデータは、全て暗号化されているからだ。
暗号化されているので人物を特定できるわけでもないし、そもそも世界中に取引データなんて無数に存在しているので、個人の特定はまず不可能である。
だから日本では仮想通貨(Virtual currency)と呼ばれているが、世界的には暗号通貨(Cryptocurrency)という呼び方が一般的だ。
もしビットコインの動きにおかしな点があれば、ブロックは生成されない。
つまり、プライバシーは守られながら、情報を透明化することによって、不正が行われることもなく正常に運営しているのである。
電子マネーと仮想通貨との最大の違いは、独立性があるかどうかだ。
電子マネーというのは所詮、法定通貨に縛られているものである。
たとえばSuicaにしても、適用されるのは日本円だ。
Suicaでチャージされるのは、日本円でしかない。
Suicaに限らず電子マネーとは、法定通貨に追随するものだ。
したがって、電子マネーの残金が1万円だとすれば、それはずっと1万円のままである。
しかし、仮想通貨はそうではない。
仮想通貨は独立した通貨なので、常に変動している。
昨日は1万円分の価値があった仮想通貨が、翌日には2万円にも、あるいは100円にもなっているかも知れないのが仮想通貨なのだ。
マイニングとマイナー
では誰が、ブロックチェーンを生成しているのだろうか。
それはマイナーと呼ばれる人たちである。
マイナーといえば、メジャー(major)の対義語であるマイナー(minor)という意味で取られる場合が多いが、そうではなくて採掘者を意味するマイナー(miner)のことだ。
仮想通貨の世界において、ブロック生成とは採掘のことを意味する。
金(マネーではなくゴールドのこと)を採掘するイメージだ。
取引データが間違いないことを確認すれば、ブロックを生成できる。
ブロック生成のことを、仮想通貨では採掘という意味でマイニング(mining)という。
マイニングに成功すればビットコインが発行され、成功したマイナーには報酬としてビットコインが支払われる。
だが、ビットコインではマイニングは容易ではない。
あまりにも取引データが多くなり過ぎたために、マイナー個人で行うのは不可能になったからだ。
ビットコインでマイニングを行おうと思えば、かなり大掛かりで高性能なコンピューターが必要である。
したがって、現在でのビットコインのマイニングは、マイニング会社が行っているのが実情だ。
とはいえ、取引量が少ない他の仮想通貨では、個人でのマイニングも可能である。
なお、ビットコインの発行はコンピューターにより上限が定められており、最大で2,100万ビットコインとなっている。
発行量に上限を持たせることによって、ビットコインの価値を保っているわけだ。
金(ゴールド)だって、地球上の金の埋蔵量が決まっているからこそ価値があるわけで、無尽蔵ならば価値などあるわけがない。
もしもビットコインがジンバブエ・ドルのように、簡単に1兆分の1にも下落ようならば、信用されることもないのだ。
つまりビットコインは、採掘量に上限を持たせることによって、インフレを防いでいるのである。
ちなみにビットコインが上限の2,100万ビットコインに達するのは、西暦2140年頃と推察されている。
我々が既に死に絶えているという、ずっと未来のことであるが、もしビットコインが発行数の上限に達すれば、マイニングが行われることはない。
マウントゴックス事件
日本でビットコイン(あるいは仮想通貨)のことが知られたのは、皮肉にも2014年に起きたマウントゴックス事件だった。
マウントゴックスとは、東京にあったビットコイン交換所(要するに、仮想通貨取引所および仮想通貨販売所のようなもの)だったのである。
マウントゴックスがハッキングされ、多くのビットコインが盗まれてしまった。
そのため、マウントゴックスでビットコインの売買をしていた多くの人が、多額の損害を出したのである。
しかも、この事件はハッキングではなく、マウントゴックスによる内部犯行の疑いも持たれた。
実際に、マウントゴックスの社長は逮捕されている。
マウントゴックスがハッキングされたのか、あるいは内部犯行だったのかはまだわかっていないが、ハッキリと言えるのは、マウントゴックスはセキュリティにおいてあまりにも杜撰だったということだ。
マウントゴックス事件によって、ビットコイン(あるいは仮想通貨)の信用は地に落ち、ビットコインの価格も暴落した。
そのため、日本では、
「ビットコインのような仮想通貨は胡散臭い、いかにも怪しいインチキ通貨だ」
というイメージを持たれたのである。
だが、怪しかったのはマウントゴックスであって、ビットコインではない。
ハッキングされたのであろうが、内部犯行だったのであろうが、どちらにしてもマウントゴックスのセキュリティが甘かったのは間違いないのである。
しかし、マウントゴックス事件が起こった後も、ビットコインは正常に運営されている。
つまり、問題があったのはビットコインではなくて、マウントゴックスだったのだ。
ちなみにマウントゴックスとは、元々はトレーディング・カードを取り扱っていた会社だったのである。
つまり、仮想通貨の運営には何のノウハウも持っていなかったのだ。
それが、ビットコインの方が儲かるということで、安易に手を出してしまったのである。
セキュリティ対策が大甘だったために、マウントゴックス事件が起きてしまったのだ。
日本では信用されていない仮想通貨
マウントゴックス事件により、日本ではビットコインをはじめとする仮想通貨はインチキだという空気が漂ったのである。
最近、ある経済学者が、
「ビットコイン(あるいは仮想通貨全体のことを言いたかったのであろう)を夢の通貨だ、と言っているのは日本人だけだ」
と、ご高説を述べられていたが、実際には仮想通貨のことを「夢の通貨」などと思っている日本人はほとんどいない。
むしろ、仮想通貨のことを理解せずに「胡散臭い通貨」と思っている人が大多数を占める。
それどころか、外国人の方が仮想通貨のことを「夢の通貨」と思っているのである。
仮想通貨のことを理解すれば、決して夢の通貨ではないことぐらいはわかる。
そして、唾棄すべき通貨ではない、ということも。
つまり、仮想通貨は利用次第で夢の通貨にもなるし、文字通り”仮想”の通貨にもなりえるのだ。
日本人は、仮想通貨のことを「夢の通貨」だとは思っていない。
なぜなら、日本円が信用できる通貨だからだ。
日本円は安定しているし、信用もできるのだから、ビットコインのような仮想通貨に頼る必要はない。
当然のことである。
ところが、外国では必ずしもそうではない。
たとえば前述のジンバブエでは、1兆倍もの超ハイパー・インフレが起こるのである。
しかも、ジンバブエ・ドルは消滅してしまった。
要するに、法定通貨は信用できないのである。
それ以外でも、戦争によって自国の通貨が紙くず同然のような事態に陥ることもある。
現在の日本では考えられないが、もし日本が戦争に巻き込まれれば、日本円は全く無価値になる可能性もあるのだ。
そもそも、1万円札とは何なのだろう。
こんなもの、ただの紙きれである。
1万円札を発行するために必要な金額は、僅か約20円程度のものだそうだ。
20円程度の紙切れに、1万円という価値を認め、崇め奉る日本人。
こんな紙切れと、仮想通貨のようなインターネット上の数字に、どれぐらいの違いがあるのか。
さらに発展途上国では、銀行が遠すぎて利用できないという人が多く存在する。
つまり、発展途上国の人は銀行口座を持っていない場合が多いのだ。
しかし発展途上国でも、携帯電話はほとんどの人が持っている。
携帯電話で支払いができて、銀行口座も持たずに済むし、自国の通貨よりも信用できる仮想通貨は、実に有難い財産なのだ。
決済が簡単な仮想通貨
仮想通貨の大きな特長に、決済の容易さがある。
たとえば海外との取り引きの場合、法定通貨をいちいち他国の通貨に両替しなければならない。
日本からアメリカに行く場合、日本円を米ドルに両替しなければならないが、その手数料は莫大なものになる。
しかも、両替にかなりの時間がかかってしまう。
この面倒さを省いたのが仮想通貨だ。
決済時間は約10分で済む。
しかも、手数料はほとんどかからない。
海外との取り引きで、仮想通貨は有利に働くのだ。
しかも、日本でもビットコインを取り扱う店舗が増えてきた。
元々は、外国人観光客の対策である。
外国人にとって、自国通貨をわざわざ日本円に両替するよりは、ビットコインで済ませた方がずっと便利だからだ。
ところが最近では、日本人でもビットコインによる支払をする人が多くなっているという。
スマホをQRコードにかざすだけで支払いが済むのだから、現金でのやり取りよりも便利というわけだ。
2019年にはラグビーのワールドカップが日本で開催され、2020年には東京オリンピックが行われる。
そうなれば外国人が日本に押し寄せて来るだろうし、仮想通貨で支払いができる店舗が急増するだろう。
しかし、ビットコインとて安泰というわけではない。
2017年、ビットコインは大激震に見舞われた。
それが8月1日に行われたハードフォークである。
上記の重大言語トップ5の①にランクされている言葉だ。
それでは、ハードフォークとは何なのか?
ハードフォークにおける「フォーク」という言葉について考えてみよう。
食器のフォークは、食物を突き刺す部分が枝分かれしており、要するにフォークとは分岐を意味する。
つまり、仮想通貨がフォークするということは、分裂の危険性をはらんでいるのだ。
ビットコインは大きな問題を抱えていた。
取引量が膨大になったために、ブロック生成時間が長くなったり、場合によっては取り引きが停止されたりしたのである。
そこで、ブロック容量に入る取引データを縮小して、取り引きをスムーズに行おうとしたグループが出来た。
ところが、それではデータを守るセキュリティが脆弱になると、反対する一派が生まれたのである。
それがハードフォーク派だ。
ハードフォーク派は、ブロック容量を大きくして、この危機を脱しようとした。
そして2017年8月1日、生まれた新しい仮想通貨がビットコインキャッシュである。
ハードフォークとは、要するにアップデートという意味だ。
アップデートとは進化することだから、それ自体はいいようのことに思う。
ところが、ハードフォークには重大な副作用も伴うのである。
ビットコインの場合、ハードフォークは分裂を招いた。
ハードフォークにより、仮想通貨が分裂するのはよくある話である。
ハードフォーク派は、ブロックチェーンにおけるブロック容量を増やして、送金をスムーズにしようとした。
それに対し、ビットコイン存続派は、データ量を圧縮して、危機を乗り越えようとしたのである。
たとえば写真データをメールで送る際、データ量が大き過ぎて送信エラーが出たこともあるだろう。
そういう場合、写真データを圧縮するのである。
それと同じ方法を、ビットコイン推進派は実行したのだ。
ちなみに、この方法をソフトフォークという。
ビットコインからのハードフォークにより、ビットコインキャッシュが生まれたわけだが、最大の特長はブロック容量の大きさにある。
ビットコインのブロック容量が1mbなのに対し、ビットコインキャッシュはその8倍の8mbなのだ。
これならビットコインのように、ブロックがパンクすることもあるまい。
しかし、ビットコインキャッシュはブロック容量を増やしたために、それまでのビットコインは使えない。
ハードフォークは諸刃の剣なのだ。
ビットコインキャッシュを使いたい人は、それまでのビットコインを使えないことを承知で、ビットコインキャッシュを選ぶ必要がある。
一方のビットコインは、データを圧縮するためにSegwit(セグウィット)という技術が使われた。
そのため、ビットコインはそのまま使うことができたのである。
しかし、それもいつまで続くかわからない。
いずれはビットコインも、データを圧縮したとはいえ早晩パンクすることは目に見えているからだ。
そこで、11月にはさらなるハードフォークを行い、ブロック容量を2倍の2mbにする予定だったが、このハードフォークは無期限延期となった。
そのおかげで、ビットコインの価格は急高騰を続けているが、ますますブロック容量のパンクの危険が増しただろう。
仮想通貨元年
2017年は、仮想通貨元年と呼ばれた。
その理由のひとつに、今年の4月1日に施行された仮想通貨法が影響しているだろう。
仮想通貨法は俗称で、正しくは「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」という、実に長ったらしい法律名だ。
つまり、法律名に「仮想通貨」という文言は出ていないが、明らかに仮想通貨を想定して成立した法律である。
仮想通貨法により、仮想通貨は法定通貨ではないものの、資産として認められるようになった。
しかも仮想通貨取引所(販売所)は認可制となり、勝手に仮想通貨の売買はできなくなったのである。
そのため、マウントゴックス事件のようなことは起きにくくなった。
しかも、マウントゴックス事件で被害に遭った人は泣き寝入りするしかなかったが、仮想通貨法によって利用者の利益が守られるようになったのである。
さらに7月1日からは、仮想通貨は消費税の対象外となった。
それまでは、仮想通貨を購入するたびに消費税が掛けられていたため、仮想通貨で物を買うと二重に消費税を払うことになっていたのである。
もちろん取引所にとっても、消費税を申告する手間が省けるようになった。
つまり、仮想通貨による取り引きがしやすくなったのである。
魅力的なアルトコイン
仮想通貨の価値は、時価総額という形で表される。
現在、仮想通貨の時価総額でダントツの1位を独走しているのがビットコインだ。
ビットコインは仮想通貨でシェア約6割を誇る1強状態である。
今年の1月で1ビットコインが約11万円だったのが、12月には200万円にまで高騰した。
たった11ヵ月で20倍近くの急高騰である。
しかも時価総額では、日本一のトヨタ自動車を抜いてしまった。
もはやビットコインには一点の曇りも無いように思える。
しかし前述したように、ビットコインには致命的な弱点を抱えている。
それが容量不足だ。
そのため、ビットコインキャッシュを誕生させた関係者は、「2018年の5月までには、ビットコインとはビットコインキャッシュのことを指すようになるだろう」と語っている。
ビットコインキャッシュは公開されて以来、いきなり時価総額でトップ5に入り、現在でも3位をキープしている仮想通貨だ。
ちなみに、ビットコインキャッシュを含めて、ビットコイン以外の仮想通貨のことをアルトコインという。
ほとんどのアルトコインは、ビットコインから派生した仮想通貨で、要するにビットコインの欠点を解消した通貨が多いのである。
「機動戦士ガンダム」に例えれば、仮想通貨とは新型兵器のモビルスーツで、ビットコインは旧ザクのような存在とも言える。
ビットコインキャッシュは、シャア・アズナブルなどが乗っていた新型ザクで、それ以外にもグフやドム、ゲルググのような仮想通貨が目白押しなのだ。
実際に、プロの仮想通貨トレーダーたちは、ビットコインには目もくれない。
これから値が上がりそうなアルトコインを虎視眈々と狙っているのである。
そんな魅力的なアルトコインを見てみよう。
時価総額で、ビットコインに次ぐ2位の座を常にキープしているイーサリアム。
イーサリアムとはプラットフォーム上の名称で、通貨単位はイーサという。
イーサリアムの最大の特長は、スマート・コントラクトという技術だ。
スマート・コントラクトとは日本語に訳すと「賢い契約」という意味で、ブロックチェーン上に契約内容が示されるのである。
ビットコインの場合、ブロックチェーンには「AさんからBさんに1ビットコインが渡った」という取引データしか記録されないが、イーサリアムでは契約内容までブロックチェーンに記載されるのである。
たとえば「AさんからBさんに1イーサが渡り、その見返りとしてBさんからAさんに○月○日までCという商品が渡る」という内容まで記録されるのだ。
イーサリアムのスマート・コントラクトは、仮想通貨のみならず、他の業界にも注目されている技術である。
法律的にもややこしい契約は、スマート・コントラクトに任せていればことは済むのだ。
そのため、スマート・コントラクトが普及すれば、代理人と呼ばれる職業、たとえば弁護士や政治家まで不要になるのではないか、とも言われている技術である。
イーサリアムのスマート・コントラクトは、社会の仕組みそのものを変えてしまうかも知れない。
時価総額で常にトップ5をキープするリップル。
リップルの通貨単位はXRPで、その特長を一言でいうと基軸通貨である。
現在、世界中に基軸通貨となる法定通貨は存在しない。
米ドルが基軸通貨的な役割を果たしているが、これは米ドルが最も強い法定通貨だからであって、米ドルそのものに基軸通貨としての機能があるわけではないのだ。
しかしリップルは、基軸通貨としての特長を備えている。
米ドルや日本円、ユーロなどの法定通貨や、ビットコインなどの仮想通貨の中心に、リップルがあるというイメージだ。
各通貨の橋渡し役を務めるため、リップルはブリッジ通貨あるいはハブ通貨とも呼ばれている。
そして2016年6月14日、アメリカ合衆国でリップルは米ドルと並ぶ通貨と認められた。
これにより、リップルは基軸通貨として大きく前進したのである。
現在では「1ドル=112円」と表示されているものが、数年後には「1XRP=295円」などと表されるかも知れない。
リップルの、もう一つの特長は決済の早さだ。
ビットコインの決済が約10分もかかるのに対し、リップルでは約4秒である。
たむらけんじは「今、注目している仮想通貨はビットコイン、ではなくネムとリップルです」と発言していた。
また、M1グランプリに出場した、かまいたちの山内も「優勝賞金の1千万円は、全てネムにブチ込みます!」と抱負を語っていたのである。
芸人すら注目するネとは、どんな仮想通貨なのだろうか。
ネムの通貨単位はゼム(XEM)。
ネムの特長は、取り引きスピードの早さだ。
ビットコインが1秒間に3~5件しか処理できないのに対し、ネムではなんと4,000件!
ビットコインの約千倍で、早いといわれるリップルの4倍である。
モナコインは、インターネット上の大型掲示板である「2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)」から発生した仮想通貨だ。
日本初の純国産仮想通貨である。
しかし、2ちゃんねるが発行元というわけではなく、ビットコインなどと同様に発行元は存在しない。
最初の頃は、2ちゃんねるでしか通用しない遊び通貨と思われていたが、その技術力の高さが注目された。
ビットコインのソフトフォークでSegwitという技術が導入されたと前述したが、世界で初めてSegwitを採用したのがモナコインだったのである。
モナコインは時価総額でトップ10にも入ったことはないが、逆に言えばまだまだ安値で、今が買い時かも知れない。
日本でしか注目されていなかった仮想通貨だが、最近では海外でもモナコインを取り扱う取引所が増えている。
◎まだまだ魅力的なアルトコインはいっぱい
以上、アルトコイン紹介してきたが、まだまだ魅力的な通貨はいっぱいある。
ビットコインの欠点を補う形で生まれたライトコインや、匿名性が高いジーキャッシュなど、枚挙にいとまがない。
そもそも仮想通貨は、数千種類にも及ぶという。
つまり、信頼性のある仮想通貨もあれば、吹けば飛ぶような何の価値もない仮想通貨も存在するのである。
中には、詐欺的な仮想通貨も多くあるのは事実だ。
極端な話、あなたでも仮想通貨を作ることはできるのである。
それだけに、仮想通貨を売買しようと思えば、キチンと情報を得なければならない。
無価値な仮想通貨や詐欺的な仮想通貨を買ってしまえば、貴重な財産をドブに捨てるのと一緒である。
その他の用語について
冒頭のトップ5のうち、①ハードフォークと②ブロックチェーンについては既に説明したので、それ以外の用語について解説しよう。
◎ローンチ
ローンチとは、仮想通貨を公開すること。
あるいは仮想通貨取引所(販売所)に上場することをローンチという。
トークンとは代用貨幣という意味で、一般社会では商品券などの金券のことを指す。
仮想通貨では、まだ上場される前にICO(Initial Coin Offering)を行って、トークンと呼ばれる仮想通貨を販売して開発費などを集めるわけだ。
トークンは一般的に安く売られるので投資には大チャンスになるが、その反面ICOでは詐欺的なトークンも売られるので要注意。
ローソク足とは、仮想通貨のチャートに表されるグラフの指標のこと。
その太い部分が柱と呼ばれ、その上下に細い線が延びているため、その姿がローソクに似ているのでローソク足という。
ちなみに、柱の上に延びている細い線が上ヒゲ、下に延びている細い線が下ヒゲだ。
ローソク足は陽線と陰線に分かれており、多くの取引所では色分けされている。
陽線の柱が長いときには、その仮想通貨が成長していることを表し、陰線の柱が長いときには、その仮想通貨が衰退していることを表す。
陽線や陰線の柱が短いときは、その仮想通貨の価格が比較的に安定しているときだ。
トレーダーたちはチャートのローソク足を見て、今後の仮想通貨のレートを予測するのである。
仮想通貨の将来性と危険性
この2ヵ月間、いつもビクビクしながら記事を書いていた。
仮想通貨は、何が起こるのかわからないからである。
常にニュースを監視し、新しいことが起きれば記事を差し替えていた。
せっかく書いた記事が、仮想通貨の情勢によって意味のないものになっていたのである。
2ヵ月の間にビットコインの値段は急上昇し、12月には1ビットコインが200万円を突破した。
前月の倍の値段である。
こんな状況で仮想通貨の記事を書くなんて、ちょっとでも情報が遅れればその記事は古臭いものになるのだ。
仮想通貨では1ヵ月前の記事など、何の役にも立たないと言っていい。
それ以外でも、ビットコインは何度もハードフォークの噂が立ったが、上記のように実際には行われなかったこともある。
記事の中には「ビットコインのハードフォークによって生まれた仮想通貨に関して」という項目があったが、ハードフォークが中止になったので、その記事はボツとなった。
この「ハードフォーク祭り」がビットコインの高騰を招いたとも言えるが、来年はどうなるかわからない。
前述したように、ビットコインは容量が限界に達したので、暴落する可能性が高いのである。
仮想通貨は今後、ますます発展するだろう。
と言っても、日本円のような法定通貨が無くなるとは思えないが、仮想通貨が法定通貨と肩を並べる存在になることは間違いない。
現金でのやり取りなんて、過去のものになるだろう。
投資対象としては、仮想通貨は株やFXに比べて安定していないので、大儲けする人や大損する人が続出した。
最も安定しているはずのビットコインですら、たった1年間で20倍近くも跳ね上がったのである。
いわば仮想通貨はギャンブル的な投資だが、プロのトレーダーでもなかなかレートが読めないので、初心者は余剰資金での投資をお勧めする。
投資するなら、既に限界に達したビットコインよりも、今はまだ値段が安いアルトコインの方がいいだろう。